
前回のブログ記事は、3回に渡って「妊活の基本栄養素」シリーズを伝えてきました。
今日は、少し専門的な話をしたいと思います。
◆今日のテーマは、性ステロイド・ホルモンの話です。
ステロイドホルモンのうち女性ホルモンE2と 男性ホルモン(テストステロン)の産生の話です。
この記事の趣旨
糖質制限を過剰にしている方へ
現在の分子栄養学などでは、糖質管理と脂質管理を区別せずに「エネルギー管理」という言葉で括っていおります。
脂質つまりコレステロールが大事です。
糖代謝や脂質代謝をあまり区別して考えません。過剰な糖は脂肪に転換されます。
細胞内での糖の分解と脂質の分解は同時には起こりにくいとされています。
総カロリーよりもむしろ脂肪の過剰摂取が糖尿病の発症を増加させてきたと疫学的に考えられています。
脂肪(トリグリセリド)の組織蓄積として肥満、糖や脂質が血中過剰に蓄積しているのが
糖尿病や高脂血症となっているのがわかってきました。
これらの事実は糖代謝と脂質代謝が深く関連しあっていることを示しています。
だから糖、脂質など栄養をエネルギーとして一括して捉えて、
生体におけるエネルギー代謝の調節としてそのメカニズムが研究されています。
採卵にてE2が上がらない方や、FSHが高い方、またはAMHが低い方へ
E2は、男性ホルモンT(=テストステロン)から変換されてゆくこと聞いたことがあると思います。
そのために、E2とテストステロンの前駆体である「DHEA」のサプリをなんとなく飲んでいる方も多いと思いますが
多すぎるDHEAーS値は、よくないのでTも含めて、
クリニックで定期的に検査をしてもらって内服量料をコントロールしてもらうこと
もしくは、主治医に質問すること御薦めします。生殖ロスの防止のためです
デメリットは別の記事で詳しく書きますが。受精の障害になることもあるということを覚えておいて下さい。
採卵ばかりに目が行きがちですが、採卵した後の受精のことまでしっかり気を配っておく必要があります。
黄体ホルモン(P4)があがらなくて困っている方へ
まずDHEAも、P4も同じコレステロール代謝から生まれてきますが、 サプリメントでDHEAを飲んでもP4は上昇しません。
P4は、DHEAの前駆体であるプログネノロンから代謝されるからです。
P4をあげたい場合は、やはりしっかりとメカニズムを理解することが大事です。
異常受精と正常受精

成熟卵(=MⅡ卵)は一番左の絵です。
これに精子が入り、2個の極体と2個の前核がみえる一番右が、「正常受精」です。
一番左は、「未受精」 左から2番めはたくさんの精子をフリカケたIVFでの異常受精
左から3番めは、精子を1匹しか入れてなくても核が3つ見えるICSIでの異常受精です。
受精確認の電話は、ストレスがMAXになる方も多いと思います。NGでも当然お金は発生しますし、
採卵までにかけて時間が無駄になるので1個たりとも無駄に出来る人はいないと思います。
このように、 この記事の趣旨は、無駄なお金を使わないことです。
そのためにはNGだった時に・・戻るべき理論を抑えておくがよろしいかと思います。。
結論を一枚の絵で書いたら・・どうなるか?

これは、卵胞の中ので男性ホルモン(T:テストステロン)が
CYP19A1(=アロマターゼ)によって
女性ホルモン(E2:エストラジオール)変換される図です。
顆粒膜細胞(=GC, Granulosa cell)からFSHやAMHホルモンの分泌されます。
たったの一枚の絵で済みます。
でも・・皆様が治療に行き詰まった時に、戻ってきて治療を考え直す時には必要な絵です。
水色は卵胞の細胞です。 卵子はまだ見えてはいません。エコーでは卵子は見えません。
この中にステロイドホルモンは、 男性ホルモンのT(=テストステロン)と女性ホルモンのE2だけです。
この二つのホルモンを、脂質代謝の川の流れでこのページは説明しています。
ホルモンとホルモン受容体
上記の一枚の絵を わかりやすく書いたのが下の絵になります。
〈視床下部〉
↓ GnRHa
〈下垂体〉
FSH ↓ ↓ LH
〈卵 巣〉 ← E2のFSHに対する負のFeedbackの正常化は 高いFSHを落とす為に必要です。
(リンクあり)
E2 ↓ ↓ P4
卵胞が大きくなる
太字のFSHは、卵胞を育てる卵胞刺激ホルモンと呼び、LHは卵胞の中の卵子を成熟させる黄体刺激ホルモンです。
FSHはホルモンなので、ホルモンだけでは何の働きもしません。その働き(卵胞を育てること)を実行するには
ホルモン受容体が必要です。凸凹という感じで、二つが結合しなければなりません。
同様に LHも LH受容体という凹が必要になります。
分かりやすいように受容体をアンテナという表現で書いていきます。 まあ Yの形をしているのがアンテナです。
★ブルーの膜でLHとLHのアンテナが組み合わさって、男性ホルモン(T)が作れて
それから、それを材料に・・・
イエローの膜でFSHとFSHのアンテナが組み合わさって、男性ホルモンから女性ホルモンE2が出来て・・
それが卵胞の中に溜まってゆくと物語です。

「理論なんて・・・そんなのどうでもいいという方へ」
卵子の成熟と排卵が大切ですよね?
つまり★の物語がスムーズに流れないと卵子は成熟しないということです。
高いお金を支払って体外受精をしても
卵子がしっかり成熟しなかったり空っぽだったり、取れたのはいいけど
採卵したら変性してしまっていたとか? そういうリスクは誰にでもあります。
一概に・・年齢だからという訳ではないです。
理論というよりお金の話だと思ってください。
スタートは肝臓での脂質代謝!

弱った肝臓では・・良質のコレステロールも作れないです。
タフが肝臓をイメージしてもらえば幸いです。

【上イラストの説明】
卵胞のイラストを作ってみました。
① FSH受容体のアンテナ とLH受容体のアンテナ
下垂体から分泌されてくるFSHホルモン(卵胞刺激ホルモン)はイエローの玉。
卵胞を育てるホルモンです。
「卵胞よ!大きくなり、卵胞の中の小さな卵子を成熟して下さい」という声を出します。
一方、
LHホルモン(黄体化ホルモン)は、ブルーの玉で書きました。
排卵を促すホルモンです。LHが上昇すると排卵が近づいていることになります。
排卵直前には、「卵子の成熟」にも深く関与しています。 (機能的黄体化による卵子の成熟)
この2種類のホルモンが脳下垂体から分泌されてシャワーのように降ってきても
それを受けるホルモン受容体がしっかり、数もあり、反応もよくないとダメです。(反応性)
川の流れのイラストでは、男性ホルモンであるテストステロンは、変換されて女性ホルモンであるE2(エストラジオール)になる
と書きましたが・・。
ブルーの莢膜細胞の上にあるLH受容体(アンテナ)でテストステロンが作られて
排卵障害やPCOSがなければ、ある酵素の働きで・・
イエローの顆粒膜細胞の上にあるFSH受容体(アンテナ)で、E2に変換さえていきます。
E2は、卵胞の中にダムのように溜まってゆき・・赤い色をした卵子を成熟させる訳です。
② AMHが低い人の場合のアンテナの反応
AMHが低かったりすると、通常はE2が250~350pg/mLで卵子は成熟するのですが・・
550pg/mLまで上昇しないと卵子が成熟しなかったりします。
また、卵巣が疲れていたりすると、FSH受容体のアンテナの数がそもそも少なくなってくるので
いくら下垂体から一生懸命に「卵胞育って!!!卵胞育って!」とボールを投げても、受けるアンテナが足りないのだから
反応しなくります。排卵誘発剤が効かなくなるのは、この状態です。
③ 卵巣が反応しなくなった時のアンテナの数のコントロール
若い人ならば、ピルを使用してアンテナを増やすことも出来ますが、年齢が高くなってくるとアンテナを増やすどころか
逆に減ってしまい、卵巣が眠ってしまうことも有りえます。
このように排卵誘発剤は、ホルモン剤であるからボールを薬で増やすこと。
一方、ホルモン受容体は、患者さんのカラダの反応でマンパワーです。
ボールとアンテナのチャッチボールがうまくいかないと、卵は育たない訳です。
だから、個人にあった排卵誘発法を手探りで探ってゆくのが、不妊治療のもどかしさです。
④ 強い刺激に卵巣がついていけなくて、腫れてしまう人のケース(OHSS)
薬で卵巣がハレやすい人っていますよね。 薬に反応しやすいことですよね?
OHSS(=卵巣過剰刺激・症候群)の方です。
卵巣の中の卵胞は採卵が近づいてくると、イラストのYELLOの顆粒膜細胞が卵子を抱えたまま機能だけは黄体化をしてくる為
黄体血流が活発になり、血管新生が生まれてくる為に腫れやすくなります。 メカニズムはこちらに。
↑「排卵に必要な炎症作用」
コレステロールから性ステロイドホルモンの産生過程

この化学式のフローチャートを・・簡単に書くと次の絵になりますね。
ポイントは2つ! 黄体ホルモンつまりP4の代謝系の話
卵胞ホルモンつまりE2の代謝系の話
今回は、PINK色の枠である「E2代謝系の話」です。
※ちなみ閉経になるとE2(エストラジオール)があまり分泌されなくなり、その代わりにE1(エストロン)が
パワーこそ10分の1ですが、全身の細胞に潤いを与えます。

まとめ:
上の川のイラストから、男性ホルモンが、アロマターゼという酵素によって女性ホルモンになるのね?と言うことを
卵胞を使って絵にすると 以下のようになります。この絵は2回めの登場ですね。

T(男性ホルモン)は、卵胞の莢膜細胞や副腎で産生されて
変換酵素(アロマターゼ、CYP19A1)によって
内側の顆粒膜細胞でE2(女性ホルモン)に変換されていきます。
卵胞の成長には男性ホルモンは重要な材料になります。
一方、
水色の部分が卵胞の中です。男性ホルモン優位ならばT(テストステロン)も
多くなり脂肪細胞がE2が変換の邪魔をしてE2がしっかり上がらなくなります。

PCOやPCOSの方や、卵巣低反応者(主に年齢の高いかた)の卵胞は、膜が硬くなりがちです。
通常、卵胞の莢膜細胞(BLUEの部分)で、LHを受けて男性ホルモン(アンドロゲン)が作られて、それを材料に
今度は、顆粒膜細胞(YELLOW)の部分おいて、E2が産生されます。
この絵に書いていませんが、脂肪細胞も介在しています。 男性ホルモンが介在することは脂肪細胞も働いていることになります。
PCOの人は、卵胞こそ多いのでE2は上がるが・・上記のイラストの卵胞の卵胞液の中のE2の分泌だけでなくP4の分泌も
まだ排卵させる前に一定量の濃度が必要です。 それがないとただでさえ固くなった太い莢膜細胞を
破裂させるP4がパワーが効かなくなったり、E2は上がっているのに卵子が成熟しにくくなったりします。
腸と肝臓を整えて、肝臓での代謝をよくしてゆく生活習慣を心がけてください。
肝臓の中のあるメカニズムによって、ホルモンを運ぶトラックが、フリーテストステロンと結合されて
男性化症状が改善されるのは有名な話です。
つまり、膜が固くならずに、排卵前でなく、排卵後の子宮内膜の黄体機能を促進してゆきます。
人気関連記事:ルトラールとデュファストンの違い


ルトラールやデュファストンは、体外受精だけではなく一般不妊治療治療(AIH等)にも使われるので、次のような悩みを持っている方も少なくないと思います。一歩踏み込んだ「違い」を説明しています。
「ルトラールはなせ太る(脂肪蓄積)」
「デュファストンでも太るのはなぜ?」
「高温期が伸びたけど・・姙娠しない」
「デュファストンを内服中に生理が来てしまった」
「体温が上がると言われているルトラールでも、体温が上昇しない」
「遺残卵胞(LUF)が以前よりも出るようになった気がする」
「体外での黄体補充を、ウトロゲスタン膣錠でなく、ルトラールに変え ることをドクターから提案を受けたが心配です」
このような悩みのある方に・・・
今回の「男性ホルモン」の話が、関連性があります。
高温期を伸ばすのは、E2です。そしてE2に変換される男性ホルモンアンドロゲン受容体の存在がその原因。
良い点もある反面、悪い反面もあります。
詳しくは、こちらのページで説明しています。
↑ 「デュファストンとルトラールの違い(男性ホルモン、アンドロゲン受容体の差)

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