高温期11日目・BT5!黄体ホルモンの働きと着床条件

副題:体外受精を成功させる為に「排卵」の二つの顔を知ること!  片手落ちが多すぎるから・・

 

高温期11日目とかBT5あたりになるとそわそわしてくる人が多いと思います。 

 

 《フライングの誘惑》

 

βーhCGがしっかりと出てくる頃だし・・少しフライングをしようかな?と思ったり・・

判定前にショック・アブソーバーを入れてから・・判定にいけるかな?と思ったり・・

でも、フライングをして微秒な線が出ていると、その日以降 一日に何回も検査薬をしたりするのも珍しくはないです。

 

基礎体温を取っている人にとっては・・高温期で体温がドンとM字ので落ちたりすると気になってしかたなくなります。

 

黄体補充の薬の特性や、P4(黄体ホルモン、別名:妊娠ホルモン)の特性を知ることも大事になります。

 

 

 

《黄体補充と肥満》

 

薬の特性を知ることは大事です。 黄体ホルモンの薬としてP4の特徴の何を強化したいのか?によって違ってきますし。

 

ルトラールが太るのも当たり前ですし、ルトラールの中の何かが、筋肉や肝臓ではなくて脂肪細胞にいくから太る訳です。

 

理屈なく太る訳ではありません。

 

では、他の飲み薬ならばどうかというと・・1錠あたりは太りにくくても、一日にまとまった数の量を飲めばそれは太ります。

 

 

 

《体外受精の決まりごとは、LHが足りなくなるから黄体補充をしなくてはいけないこと》

 

体外受精は、排卵誘発で薬でLHを抑制しながら卵胞を育てるという「LH分泌不全」を意図的にします。

 

その為 LHとP4が連動して高温期では「黄体分泌不全」になるのですが、

 

それを避ける為に「黄体ホルモン製剤」を補充します。

 

 

 

◆ファースト・テーマは、黄体ホルモンの種類と違いです。

 

  Q1)デュファストンよりも、

    ルトラールが高温期が伸びてゆくのはなぜか?

 

 

    Q2) 細胞分裂することがわかった脂肪細胞は

    デュファストンよりもルトラールの方を好むのはなぜか?

 

特に 高温期が伸びる・・とか、太るとか・・そういった体感しやすい症状の原因を少し専門的に掘り下げて考えます。

 

具体的は、「高温期だけではない!黄体機能不全」のメカニズムを説明します。

 

それが採卵成績や移植成績にどれだけ「ボディー・ブロー」を与えているか?

 

高齢の患者さんは、低温期から その後がうまくつながらない現実を見せます。

 

まずは、現実をみない限り、最短の道は見えてこないからです。

 

 

   

 

 

 

◆サブテーマは・・

 

 

体外受精を成功させる為に「排卵」の二つの顔を知る

 

   採卵に苦労している人はもちろん、 着床に苦労している方へ。

 

   具体的にいうと・・    

 

   トリガー日前後の 排卵に必要な炎症作用「ブーストUP」と過剰炎症にならないような「クールダウン」話です。 

 

   排卵には2つの顔があります。

 

    1つ目の顔)  卵胞の成長と卵子の成熟    

    2つ目の顔)  炎症作用

 

            程よい炎症がないと良い排卵は出来ない、過度の炎症があると質が低下する。

            着床も子宮内膜と胚盤胞には、それぞれ炎症の温度差がある。 

 

 

    採卵と移植をわけて考えがちですが、それは人間のスケジュールであり

 

    卵にとっては、それは連続しています。 

 

    両足を 「採卵周期」と「移植周期」に又をかけています。

 

    卵にとって、それが快適でないと当然!細胞死(=アポトーシス)になります。不快だからです。

 

 

    過剰炎症は、酸素を必要として、そして「活性酸素」を生み出す。 それは採卵。 ナーバスな減数分裂の時間です。

 

    そして、時間を越えて・・移植。

 

        そこで何が起こるか?!を話します。 卵にとって快適かどうかだけをPOINTにします。

 

 

 

    

     


まず高温期が伸びる理由を知ること!

 

  自然周期でのBT(胚盤胞移植) もしくはAIH(人工授精)で・・高温期が伸びていると期待と不安の葛藤が生まれます。

  「今度こそは・・!」とクリニックの患者全員がそう思っています。

 

  高温期を伸ばすケースには、2つのケースがあります。 (以下イラスト)

  排卵日をDOとカウントすると、

  人工授精(AIH)ならば、このDOの日に精子をバイパスを作ってあげて子宮に戻します。

  卵管の中で、胚盤胞まで育つ子もいれば、途中で外(=子宮内膜の上)で後半を過ごす子もいます。

  

  【人工授精(=AIH)】

  D5(=人工授精をしてから5日後)に通常ならば胚盤胞になります。

  胚盤胞は、初期胚盤胞 ⇒  完全胚盤胞 ⇒ 拡張胚盤胞 ⇒ 孵化胚盤胞 とパンパンに成長してから

       (BL1)      (BL3)    (BL4)   (BL5)

  透明体を突き破って(=ハッチング)してから「外」にでます。

 

   この時、BL1からBL5に成長するスピードに個人差があります。

  この胚(=受精卵)の成長スピードにあわせて子宮内膜の成長スピードも「同調」してこないと着床はないです。

  イラストをみてもわかるように

  着床は、D6~D7あたりにAIHでは実行されます。

 

  【胚盤胞移植(=BT】

  一方

  自然周期のBTでは、 子宮内膜の成長にあわせて、外部で育てた胚盤胞を、ときにはアシスト・ハッチングして

  外に出やすくしてあげ、胚盤胞と子宮内膜を「同期」させて妊娠率をあげる方法です。

 

  【高温期を伸ばす因子】

 

   基礎体温などを記録しているなどは、グラフが「M字」になっていたり、だんだんと体温が落ちてきたりすると

   不安なると思いますが、それに振り回されない方がいいです。

 

 

   体温が上がっているからと言って・・内因性のP4(自分のホルモン)が出ているとも限らないし

   後半で説明するP4製剤(外因性のP4)を入れていても、自分のPR(P4の受容体のこと)と結合して

   本来のP4作用をフルパワーで出しているかどうかもわからないからです。

 

       P4(黄体ホルモン)を凸としたら、 PR(黄体ホルモン受容体)は凹であり、凸+凹が結合して

       P4作用を生み出してきます。 遺伝子の発現の話になります。

 

 

   つまり、P4さえしっかり出ていれば・・高温期が伸びると思っている人が多いので正確な知識を持って下さい。

      

       最終的に高温期を伸ばす因子はE2であるということ。

       E2とP4のバランスが取れているのが一番ベストですが、 P4が早めにリタイアして落ちても

       E2のチカラで高温期は伸びる。

 

   そして、 E2が落ちたら生理は近いということ。

       ストンと落ちずに、ダラダラと落ちてきたら、脳は生理がきたと勘違いして

       軽い出血を出してゆく。 いわゆる「茶オリ」です。

 

       もともと生理(=消退出血)が少ない人は・・どれがday1かわからなくなります。

      

 


黄体補充の薬のバリエーション

 

 クリニックによって考え方が違うので・・

 

  ・1種類の黄体ホルモンで済ませるクリニック。

  ・ 複数の黄体ホルモンで、取りこぼしがないように(∵どれが合うかわからないから?と言う考えの為)

                          薬や注射などを組み合わせて複数カバーをするクリニック

  

   色々です。

 

 そして、黄体ホルモンチェックの有無も色々

      黄体補充の薬によって、飲み薬師などP4採血に反映されないものもあるのでP4チェックをしない所が多いです。

 

    

  

 黄体補充の薬は3パターン

  1)飲み薬

  2)筋肉注射

  3)座薬(=経膣)

 

  その中で1番多いのは、(3)座薬でしょうか?

  昔は(2)で毎日注射をうちに患者さんは行っていました。 

  通われいる人にそんな悲惨な負担をかける筋注よりも、経膣の回数/dayやかゆみの差こそはあれ

  座薬の方が、補充した黄体ホルモンが全身循環をせずに

  ダイレクトに子宮内膜に到達するメカニズムがあるので、好まれる訳です。

  飲みすぐりのみとかは・・採卵が低刺激のケースでは多いです。デュファストンやルトラールなどです。

 

  3)座薬の種類では、2014年の秋に初めての日本製の座薬が出てきました。

          2014年のルティナス膣錠        (フェリング・ファーマ製)です。 

          2016年にはウトロゲスタン膣用カプセル (フジ製薬製)

           〃     ルテイム膣用座薬      (あすか製薬製)

           〃     ワンクリノン膣用ゲル    (メルクセローノ製)

 

  

    ジェル状のものなどは、膣の中でジェルが蓄積して、ごてっとした塊とかゆみに個人によっては辛い方もいます。

    

 

 

     


黄体ホルモン(P4,プロゲステロン、Prog)

 

  E2は、P4と対象的な動きをします。

   分泌組織・ 排卵・子宮収縮の3項目にわけて「表」でみてみましょう。

 

 

ホルモン名 分泌する場所 排卵 子宮収縮
E2 卵胞(卵胞の顆粒膜細胞) (+)排卵の促進 (+)子宮収縮の促進
P4

黄体(卵胞の黄体化した顆粒膜細胞)

(ー)排卵の抑制 (ー)子宮収縮の抑制

大切な働き

 

  「黄体ホルモン作用」には色々な働きがありますが・・

 

  それぞれの効果を狙って・・さまざまな黄体ホルモン製剤の種類差を生んできます。

 

    1-1)抗ゴナドトロピン作用

        

       ゴナドトロピンとは、FSHとLHホルモンのこと。 

       排卵期に主席卵胞が排卵して高温期になりますが、高温期はP4が上昇することによって、主席卵胞以外の小さな

       卵胞たちが排卵しないようにFSHとLHをP4が下げてゆくことを「抗ゴナドトロピン作用」といいます。

 

       凄く簡単にいうと・・

        排卵抑制になるこのチカラが強いと・・高温期はのびます。   例)ルトラール

             逆に   〃  弱いと・・高温期はのびない。   例)デュファストン

 

     1-2)一歩踏み込んだ重要なP4の働き:高温期でのP4上昇は、LH↓↓つまり排卵を抑制している。

 

       上記のゴナドトロピンとは、LHとFSHのホルモンであり脳の下垂体から卵巣に向けて分泌されるホルモンですが

       P4は、視床下部を介してLHサージを抑制しています。排卵を調整しています。

 

       凄く簡単に言うと・・

        高温期は体温を上昇させるP4が高いので、そのP4上昇が排卵を抑制し、高温期を伸ばしているということ。

        このP4のチカラが弱いと高温期は、当然ながら短くなります。

 

       このブログを読んでいる体外受精の経験者の中には、P4が上昇した高温期での「高温期採卵」など特殊な採卵方法を

       している方もいると思いますが、高温期採卵はこの特性を利用しておりP4が高い状態でも卵胞は成長してくるので

       そこに採卵をかける訳です。P4はパルス的に分泌されるので卵胞の発育にはマイナスにならないからです。

 

       

     話を戻しますが・・

       デュファストン以外の黄体ホルモンはこの作用「抗ゴナドトロピン作用」を持っています。

       デュファストンは、この高温期に次の生理に向かって成熟してゆく卵にブレーキ(FSH↓、LH↓)をあまりかけたくない

       特徴があります。そのため低刺激のクリニックで使われるのは、次の連続採卵を考えてのことです。

       黄体ホルモンでもブレーキは解除するという考えからです。

 

     《まとめ》

       ★デュファストンとルトラールでは、この成分が違います。

 

       デュファストン ⇒ 抗ゴナドトロピン作用が無い。

                 つまり高温期に育ってくる卵胞を押さえつけるチカラが弱いので、高温期はのびない。

 

       ルトラール   ⇒ 抗ゴナドトロピン作用が有る。⇒ 黄体期がより伸びる

                  つまり高温期に育ってくる卵胞を押さえつけるチカラが強いので、高温期は伸びる!

 

 

    2)抗エストロゲン作用

 

       エストロゲン受容体におけるエストロゲン(E2)の作用を阻害する作用のこと。

       エストロゲンは、E2だと思って下さい。

       E2の働きは、①卵胞を育ている ②オリモノ ③子宮内膜を厚くする (参考:それの厚さを維持するのはP4)

       この3つですが これらのうちをどれかを邪魔するというのが「抗エストロゲン作用」です。

       

       《身近な例①》 クロミッド

 

       身近な例だと、クロミッドでしょうか?!

       クロミッドはたくさんの卵胞を育てたかいから、①を優先したい為に、②と③をある程度犠牲します。

        詳しくはこちらの記事で書いています。 

               ↑ 「クロミッド(抗エストロゲン製剤)の副作用とメリット」

 

       《身近な例②》 子宮内膜症の薬であるデュファストン

 

       E2が上昇して困るのは、乳がんリスクが増えるひとや、子宮内膜症の人。

       正確にいうとE2ではリスクは上昇しないので、E2に合成黄体ホルモンがプラスされるとリスクが増します。

       その為、デュファストンは、子宮内膜症の薬になっています。 抗エストロゲン作用があるとメリットがあります。

 

    3)抗アンドロゲン作用

 

       アンドロゲンは、男性ホルモンのこと。男性ホルモンが過剰に出てくることをブロックします。

       E2の前駆体は男性ホルモンのテストステロンですが、アンドロゲンの産生にブレーキをかけてE2をつくりにくい

       ようにするブレーキです。2)と似ているますが、その産生プロセスの上流の部分でブレーキをかけるもの

 

    4)グルコ・コルチコイド作用(=糖質・コルチコイド)

 

       黄体ホルモンを飲んだりすると・・「あ!太った感じがする」と感じた方は多いと思います。

       お太りになれる要因がこの作用です。

       短い期間(=急性期)飲んでいると脂肪を分解したり、糖質・脂質・アミノ酸のミトコンドリア産生にアクセルを

       踏むのでお痩せになったりといいのですが

       長い期間(=慢性期)飲んでいると全く逆の作用になります。

       中心性肥満すなわち脂質蓄積が起こってお腹がぽっこりしてきます。

 

       わかりやすくいうとメタボリックシンドローム、この糖質コルチコイド作用が過剰に関与してしまう

       脂質異常です。 

 

       ★デュファストンとルトラールでは、この成分が違います。

 

       デュファストン ⇒ 糖質・コルチコイド作用が無い。 ⇒ ルトラールより太らない?

       ルトラール   ⇒ 糖質・コルチコイド作用が有る。 ⇒ デュファストンより太る

 

 

     

       

 


高温期が伸びるメカニズム

 

「・・・・でさぁ  私は今 高温期が伸びていてそわそわしているよ。」

 

「妊娠しているか? それともそうじゃないのか?不安なの。 基礎体温が落ちてきて心配なの。」

 

「ルトラールとデュファストンどっちでもいいから・・太っても構わないから陽性が欲しい」

 

                                    by Little My

 

 


 

  デュファストンよりも、

  ルトラールが高温期が伸びてゆくのはなぜか?

 

    

   上のイラストでも、高温期にP4が落ちても、E2が残っていると・・高温期は伸びます。

   ルトラールには、アンドロゲン作用があるので、E2への変換ルートが残こしてある為に高温期は伸びます。

    

 

  ★ルトラール

   脂肪を蓄積し、体内からの排出率が低い。 

   7日間で34%しか体外に排出されないので、太ると感じる訳です。 3分の2は1週間たってもカラダの中にいる。

   脂肪細胞のメカニズムにどうルトラールが関与するか?はまた別の記事で書きたい思います。(∵脱線して長くなる為)

 

  ★デュファストン

   確かに、新鮮胚移植においては、プロゲステロン(薬名)よりも妊娠率が高いと報告はあります。

   しかし、着床の必要な「子宮内膜の脱落膜化」が十分ではないという報告も一方ではあります。明確にはなってはいません。

   また、デュファストンはルトラールと違って男性ホルモン「アンドゲン作用」が全くない為に、様々なメリットがあります。

 

   アンドロゲン作用があるとE2に変換される為に、子宮内膜症などエストロゲン依存性疾患に向いていません。  

   デュファストンは、子宮内膜症の保険適用の薬剤でもある素晴らしい黄体ホルモン剤です。

 

  【重要】 男性ホルモン作動の有無についてこちらのページにて、詳細に記しております。

                          ↑ 「ルトラールとデュファストンの違い(アンドロゲン受容体の差)

  

  【子宮内膜の脱落膜化とは・・?】

 

   借りに妊娠をして胎嚢(たいのう)が確認できたとイメージしてください。胎嚢の向こうにいずれ「かわいい赤ちゃん」が

   見えます。

   この胎児の発育には、絨毛の血流ととても関係がありますが、脱落膜はお母さんが出産するまでの赤ちゃんと母体をつなぐ

   大切な役割を9ヶ月弱もづづけることになります。

   脱落膜というのは、受精卵が着床できるように変化した子宮内膜のことです。

 

   ↓ 下のイラストをご覧下さい。

 

     着床の直前の「子宮内膜」を示しています。

     もっとも、実際には胚盤胞がコロコロと転がっていて、着床する為に胚盤胞は、1番外の膜である「透明帯」を脱ぎ捨てて

     中身だけがデロっと出てきて着床し、子宮内膜に浸潤してゆくのですが

 

     卵管から飛び出てきた胚盤胞が最初に子宮内膜に着地する時のイメージ図です。

     この時、子宮内膜は、先程書いたように「前脱落膜」化をしており、受け入れる準備をしています。

     受精卵が孵化してくるのを待っています。 

 

  

    

 

 

高温期を伸ばすには2つの方法がある。

 

高温期が伸びるのはなぜでしょうか?

高温期がなかなか来なくて、しびれを切らして・・クリニックに電話をかけて内診予約をして採血してもらった経験がある人も

いると思います。

 

「(ホルモン結果を見ながら・・)E2はまだ高いから そろそろかな?」とか聞いたことはありますか?

 

つまり、生理が近づいてきても、E2の血中濃度がストンと落ちずにずるずるとE2が伸びていたならば高温期は伸びます。

アンドロゲン作用が効いていて、男性ホルモン(テストステロン)から女性ホルモン(エストゲン、エストラジオール、E2)に

酵素変換が効いていれば、高温期は伸びることになります。

 

 図に書くと・・


黄体機能をしっかりと効かせる為に・・

黄体機能不全のケーススタディー①

 

黄体機能不全という言葉は、最近あまり使われなくなりました。 それは下図でもわかるように高温期だけに限定できないからです。

 

今回のルトラールとデュファストンの違いというブログ記事でも、何が男性ホルモンとくっつきやすいか?脂肪細胞になりやすいか?

 

それがテーマでした。  黄体機能がしっかり効かないというGOALの前に原因がさまざまに広がっております。

 

低温期・低温期後期・排卵期・黄体期と・・P4のチカラは影響があります。だからP4は妊娠ホルモンと呼ばれるわけです。

 

  上述した黄体機能不全の3ブロック(低温期・排卵期・高温期)がいかにつながっているか?ケーススタディでみてみましょう。

 

  全部を説明するとぼやけるので 排卵期にフォーカスしてみます。染色体異常の発生POINTだからです。

 

  排卵期でよい排卵をするか?悪い排卵をするか?によって成績が変わってくる

 

  「自然周期、 新鮮胚移植(採卵後・・胚盤胞になるまで外部で培養してから移植)」で考えてみましょう。

 

  

   

 

   【図の説明】

   

   2周期連続した「生理周期」と 「正常な黄体機能」を比較してみてください。

 

   P4の部分は「YELLO」 ⊿❏で書いています。 P4活性が切れるとストンと落ちます。

 

   全周期は排卵はしっかりとしていたが、高温期で早めにP4活性が切れて、E2のみになり生理がずるずると伸びるグラフです。

 

   生理が伸びたから、翌周期の移植にマイナスになる訳ではなく、

 

   E2だけが伸びた原因、P4活性が切れて原因を探ることが大事です。 ※カンファレンスではここも分析してゆきます。

 

   男性ホルモン(アンドロゲン受容体)とか脂肪代謝とかそういう話になります。 

 

   特に通常のE2産生メカニズムからズレて、イレギュラーなE2産生におちいった時に、図のようにE2の棒グラフが伸びます。

 

     ・薬剤 ・サプリメント ・偏った食事 でも イレギュラーなE2産生は起こり、 

 

      採卵だったら卵胞経とE2血中濃度にズレが生じます。その結果、卵子の成熟にも影響ができてます。

 

 

  図の今周期は、「自然周期 採卵+新鮮胚移植(胚盤胞)」です。

 

     これは高齢妊活者の方が良くある例を書いています。

 

     早期のLHサージ ⇒ 早期黄体化 ⇒ 機能的黄体化のタイミングの狂い ⇒卵子成熟のアクセルの甘さ

 

     ⇒ 排卵後のP4の産生(内因性)の緩さ  

 

     ⇒ 早期黄体化によって子宮内膜が早めに胚受容時期を迎えて、胚盤胞を新鮮胚移植した時は着床の「旬」を逃す

 

     ⇒ 着床の窓のズレ

 

     ⇒ 【子宮の問題】赤ちゃんになる卵でも、ズレによって「化学流産(ケミカル)」で終わってしまう

 

       または、

 

       【卵の問題】 機能的黄体化がしっかりとできなかった為、採卵前の卵胞内において

 

              COC(=卵・卵丘細胞複合体)が、卵胞の内側の「卵胞壁」からきれいに剥がれずに

 

              採卵しても変性卵・空胞に終わってしまう。

 

              あるいは・・ COCにLH受容体の発現が少ないのでGVやMⅠで採卵してもMⅡ化せずに

 

              受精ステージまでいけない。移植もキャンセルになる。

 

   すごく極端な例を書きましたが、

 

   このように黄体機能不全は高温期だけでなく、低温期・排卵期・黄体期に渡って原因を広げてます。

 

 

   それぞれの周期で何が必要か?考えることが大事になります。 

 

   それはネットで他人の妊娠に効いたから私も取り入れてみようかな?という「他人視線」では難しいので

 

   主治医との医療コミュニケ-ションと、数値にあわせた栄養管理・サプリ管理・運動・睡眠の両軸が必要です。

 

   そして、その両軸を支えるBODYワークが、メンタルになります。

 

 

   詳しくは・・・こちらの記事をご覧下さいませ。

            ↑ 「黄体期だけはない!!黄体機能不全」


着床直前の”子宮内膜”の環境

まるで人工衛星が、月面に到達するような感じですが・・

 

着床する瞬間の子宮内膜では様々が準備がされています。 着床といってもステップがあり

    1)胚盤胞と子宮内膜の表面の細胞の信号が合っていないとならない  (=胚対立)

    2)胚盤胞と子宮内膜と接着しなければならない           (=胚接着)

    3)着床した後に胚盤胞が子宮内膜の奥に浸潤していかなければならない(=胚浸潤)

 

ここでは簡単に、説明しますが

 

    1と2を実現する為に次のような条件が必要になります。

 

条件1:子宮内膜の前脱落膜化を実現させる為に、子宮収縮をおこさせないこと。《地殻変動はしない》

 

    子宮内膜の前脱落膜化を成功させる為に・・ 地面(子宮内膜)は地殻変動のように子宮収縮を起こしてはならない

    ようにE2とP4がともに協力して、着床期の子宮内膜を整える。

  

 

ホルモン名 分泌する場所 排卵 子宮収縮
E2 卵胞(卵胞の顆粒膜細胞) (+)排卵の促進 (+)子宮収縮の促進
P4

黄体(卵胞の黄体化した顆粒膜細胞)

(ー)排卵の抑制 (ー)子宮収縮の抑制

                                                   ↑

                                               ここの部分です!!

 

        地殻変動を起こさせようとするE2に対して、P4がそれをセーブする働きです。

        その為に、子宮収縮などを引き起こすような”炎症”があったらいけない訳です。

     

        P4は、子宮収縮をおこさせないばかりか、

        脱落膜化のトリガーを全て握っているから、「妊娠ホルモン」と呼ばれます

 

 

★PCO体質のネック

        PCOやPCOSの方は、このP4の働きが弱いので

        子宮内膜がE2主体になり、「子宮収縮」が起こりやすい人がいます。

 

★重金属と乳酸菌

 

        子宮内膜に重金属が充満していても、それが炎症を起こすきっかけになるのでいけないです。

        だから乳酸菌フルな状態をつくる必要があるので、カラダは腸から子宮に向けて

        たくさんの乳酸菌の大移動をさせてきます。

 

               子宮内膜に重金属が集結するメカニズムは、こちらの記事に書いておきました。

                                     ↑

                                  「有害重金属を子宮内膜からキレート(=除去)しよう」 

 


体外受精を成功させる為に「排卵」の二つの顔を知る

 排卵の瞬間・・・ LHサージの後のドラマ
 排卵の瞬間・・・ LHサージの後のドラマ

 

  LHサージの次にやってくるのが、排卵の炎症作用です。

 

  炎症が悪いのではなく、

  適度な炎症内に抑えておくこと。

                             

 

   移植の時も、戻す卵の回りの適度な炎症は必要になります。

   ※ 子宮内膜も過度の炎症は悪いのですが、

 

      適度の炎症がないと

 

      着床に必要な白血球の侵入は起こらないです。

 

 

採卵の世界と移植の世界のブリッジの役目をします

              bridge


体外受精を成功させる為には・排卵の二つの顔を知らないとなりません。

 

 ☑ 採卵で苦労している方は、下の円グラフの左側の「卵胞の成長と卵子の成熟」しかみていません。

 

 ☑ 移植で苦労している方は、    〃  右側の炎症の部分で、子宮内膜サイドしか心配していないです。

                        胚盤胞が着床する為には、適度の炎症が卵にも、そして子宮内膜にも必要です。

                        

 

円グラフの左(水色):卵胞の成長  ×  卵子の成熟 させる排卵の仕組み

 

           卵胞と卵子は違います。超音波エコーで黒く見えるのが卵胞ですが、卵子はエコーでは見えません。

           体外受精で採卵して初めて目に見えるものです。

 

           ☑ 卵胞が大きくなったから、かならず卵子が入っていると思っている。

   

           ☑ 卵胞が大きくなったから、全部が受精する能力がある成熟卵(MⅡ卵)だと思っている。

 

           ☑ 採卵して成熟卵になったから、必ず胚盤胞(子宮内膜に入っていける最終形態)になると思っている。

 

           これらは全部が間違いです。

           正解だったら・・本当にいいのですが、こんなに一回あたりの金額が高い体外受精で苦しむ人はいません。

 

           卵胞の成長に合わせて、卵子も成熟させるのが排卵の仕組みです。

 

 

円グラフの右(紺色):炎症反応が程度に必要な排卵の仕組み

 

           排卵の仕組みは、右側の紺色の半円が大事になります。

  

           この部分が、卵子の成熟と着床への橋渡しをしています。

 

           炎症と聞くと悪いイメージしか思い浮かべられない方も多いと思いますが、排卵で卵胞を破裂されるのも

 

           最低限の必要な炎症が必要ですし、着床も炎症作用がないと着床に必要な白血球たちも寄ってこないです。

 

 

二つの半円が協力しあって・・将来赤ちゃんになる卵子を作るのが排卵であり

 

       排卵するまでに、着床の準備をスタートさせます。

       着床はE2とP4の共同作業ですが

       排卵してP4が動くのではなく、排卵する前からP4は働いています。

      

       P4は排卵したあとの黄体から出るホルモンと教科書どおりに習った方は

       残念ながら間違いです。

 

        妊娠ホルモンと呼ばれるP4は、天使と悪魔の面と両方を持っています

 

        詳しくは、こちらの記事を参照。

               ↑ 「採卵前のP4のコルチゾール化はなぜ悪い」

                 


「体質だから・・」その意味は深い

◆日本人特有のDNA配列がある=「体質」という盲点

 

【日本人特有のDNA配列は、国際ゲノム基準の雛形とは少し違う】

 

この話をする前に・・日本人特有のDNAの配列があります。

「薬が効かなかったり」しても「体質だから・・・」と一括りにされてお茶を濁さざるを得なかった時代から、

個別医療への舵取りが今始まっています。

 

 

今をときめくNGS(短鎖技術による次世代シーケンサー)は、DNAの雛形に付きあせて調べていますが、

その雛形は、2003年のヒト・ゲノム解読完了での国際ゲノム基準です。  

 

そのDNAの雛形は、ヨーロッパ系とアフリカ系の人に由来しており、一般的な日本人に特有のDNAの変化が反映されていませんでした。

そのために本来あるべき違いが検出されなかったり、間検査があったりと問題視されていました。 これが解消されつつあります。

 

 

 

 

映画好きの方ならば、「フォトグラフ51」

(主役:ニコール・キッドマン)

を知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

DNAの二重らせん構造を、X線回析写真“フォトグラフ51”に収めた彼女が、同僚の男性学者たちに写真データを盗まれてしまい、。

歴史に残る大発見をしておきながらノーベル賞を受賞することなく、38歳という若さで実験でたくさんのX線を浴びて卵巣ガンのため他界した、薄幸な彼女の物語が映画の内容でした。

 

今も・・彼女の功績は、日本人特有のDNA鑑定に息づいています

 


 

  黄体補充の記事ですが・・ 「過去にその薬が効かなかった」という事実はこれからの体外受精の治療を組み立てる時の

 

  有力な情報になるということを覚えておいて下さい。

 

  全部スムーズで何も問題が一切なかった人が、妊娠しないという苦しみは計り知れないです。

 

  新しい検査や最新の医療を散々して、それでも妊娠しない人こそ、「体質」というものを科学的にみてみるとよいと思います。

 

  科学とは、データ!データ!と考えがちですが皆様が心配している黄体機能は「副腎機能」によるものも大きいです。

 

  副腎機能は、心因性と日内リズム(=より良き睡眠)にかなり影響をうけます。

 

  ストレスがカラダに影響することを忘れないでください。

 

  

   

 

 

  このHPの記事をすぐ閉じるのも・・また 最高の治療の一つかも知れません。

 

  スマホ依存は・・精神的によくはないです。

 

  無料の問い合わせ窓口も当社では開いておりますので、気軽にご利用ください。 

 

 


◆関連ブログ記事

《卵子の質と染色体》

 上記の絵をクリックすると、リンクあります。
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PGT-A, 着床前診断
↑ アイコンにリンク有り

 

 

 

  ☑ 成熟卵(MⅡ卵)が採れない!

 

  ☑ 質の良い卵を取りたい!

 

  ☑ 良好胚を移植しても全く着床しない!

 

  着床前診断(PGT-A)の観点から

  染色体・DNAのレベルから説明。

 

 「卵子の質」、そして受精後の「胚の質」を考えます。

  

  良い卵子とは「染色体の数の異常」=aneuploidyが

  ない卵のこと。 

  染色体異常は若い方でも半分発生します。

  

  人が妊娠する難しさと・・

 

   卵子の質に関する詳細ページは、こちらに記しています。

                ↑

 

                 「卵子の質と染色体」