抗エストゲン製剤のクロミッド・セキソビット・フェマーラ

抗エストロゲン製剤であるクロミッドのメリットと副作用
抗エストロゲン製剤であるクロミッドのメリットと副作用

クロミッド・セキソビット・フェマーラは競技の世界では    ドーピング薬物だけど・・なんで?

上記の3つ薬は、「抗エストロゲン製剤」だからです。

 

 

クロミッド(クロミフェン)は、不妊治療ではメジャーな薬ですが・・

 

内膜が薄くなる・・?とかそうした副作用しか知らない人も多いです。似た仲間にシクロフェニル(セキソビット)がありますが

 

内膜が薄くならないようにと変えてもらった方もいるのではないでしょうか?

 

また、クロミッドもセキソビットも「抗エストロゲン製剤」であるがゆえに・・ 

 

スポーツ競技の世界では2011年のWADA禁止物質リスト にのり、「ドーピング薬物」にもなっています。

 

フェマーラも「ドーピング薬物」です。男性ホルモン(テストステロン)からアロマターゼという酵素によってE2が産生される

 

そのルートを阻害することで、男性ホルモンを増やす働きがあるフェマーラが「ドーピング薬物」になるのはわかりやすいですが

 

なぜ?! クロミッドはセキソビットという「抗エストロゲン製剤」がオリンピング等の競技の世界で「ドーピング薬物」になる

 

のか?も考えながら、この記事を読んで欲しいです。

 

  これは、不妊治療の記事ですので・・「抗エストロゲン製剤」の副作用を考えるヒントになれば幸いです。

 

 

よくありがちな3つの疑問

 

 

患者さんが、今回のテーマは・・

クロミッド(抗エストロゲン製剤)のメリットと副作用です。

                                  side effects  

                      

クロミッド(=セロフェン、クロミフェン)の薬の仕組みを知ることによって、自分のカラダの反応を自分でも考えるようになります。

次のような疑問を持つ人のQ&Aになればいいと思います。

 

 Q: クロミッドを長い周期に渡って飲み続けると・・

      子宮内膜が薄くなるのはなぜ?

 

   Q: クロミッドを長い周期に渡って飲み続けると・・

      オリモノ(=頸管粘液)が少なくなるのはなぜ?

 

 Q: クロミッドは、なんで排卵率は高いのに・・妊娠率は他の薬よりも低下するの?

 

 

    

    その疑問が浮かんだ時に、自分の中で疑問を解決して・・次の内診の時に備えるというスタイルが

    医療に積極的に参加していく人と、そうでない人の差です。

    

    この副作用(サイド・エフェクト)の話をするのは、カラダは変化するとことを直感的に掴んでおいてほしいからです。

 

    


メリット・副作用は「はしご」で考えよう。

 

 

  基礎体温では、卵胞期の右に排卵があり、その右に「高温期」があるのでまるで別個に動くようなイメージがありますが

  全部、つながっています。クロミッドは、低温期の始めあたりから飲みますよね?

 

  上下のはしごをイメージしてほしいのですが、卵胞期のはしごに何かトラブルがあると、高温期に影響します。

  

      高温期には子宮内膜の成長スピードがリアルに出てきます。

  子宮内膜は、増殖期から「分泌期」に変わらないと胚の受容能を得ることができません。

 

  正常胚ですら、着床しないです。 

 

  着床だけではないです。

  高温期にも卵胞は成長しており、次の生理を待っています。

  

  高温期は、移植はもちろん、次の周期の採卵にも大切な「櫓(やぐら」です。

  内膜が薄くなる・・・そうした心配だけではないのです。

 

 

メリット×2、デメリット×3

クロミッドのメリットは、低温期のはしごの世界で生まれます。

いわずと知れた「卵胞発育」の作用です。 卵胞が複数発育するというものです。

 

デメリットは、高温期を中心に生まれます。

 

でも本当のデメリットは、低温期の水面下で生まれ・・ 潜水艦のように進んでゆきます。

 

 

 

 

潜水艦が海面に浮上してしまう人もいれば、

まったくそんなの関係ない!という方もいます。 だから厄介なのです

 

 

【メリット① :短期間の内服による卵胞発育を目的】

 

 

【メリット② :長期期間の内服による卵胞発育と同時に、排卵抑制と目的がWになる】

 

  体外受精(低刺激法による採卵)のステージだと

  短期間ではなく、採卵の直前あたりまで長期間、クロミッドを内服するケースが出てきます。

  これは以下の2つの目的をとりたい為です。

        目的1:卵胞発育

        目的2:排卵抑制( 卵胞が複数育ってきてE2があがり、LHサージが起きないようにLH↓・FSH↓という排卵抑制を

                  かけること。 卵胞発育のブレーキをかけながらアクセルももっと使いたいから。)

            ※クロミッドは、短期間の内服では卵胞発育ですが、更に飲み続けると今度は真逆の作用「排卵抑制」も

                   効いてきます。その匙加減に個人差が出てきます。

 

 

 

【デメリット(副作用)】

   1) 排卵前のオリモノの量が減少する

         ∵ クロミッドは、E2の負のフィードバックを阻害する薬だから

           本来、オリモノを出すエストロゲン受容体に、本物のE2がカチっと合体するのを阻害して

           クロミッド自体が、入れ替わってしまう。

           そして、その目的である卵胞発育のスイッチをONにする為に、

           オリモノをさせるE2受容体の行き場所が少なくなってしまう。それによってオリモノがすくなるなる。

 

   2) 子宮内膜の厚さが薄くなる

           これを考える時に、上記のイラストの階段で考えることが大事です。

           多くの方は、タイミングをとる日程が決まる時、人工授精の日程が決まる時、採卵の日程が決まる時の

           子宮内膜の厚さが薄くなることを心配すると思います。

 

           そこでしかエコー(超音波)を見てなかったら、そこでしか判断できませんから。

           低温期(下の階段)で子宮内膜は徐々に厚くなり子宮内膜は増殖期を迎えます。

                          でもまだ・・着床能は持っていないです。

           高温期(上の階段)では子宮内膜は、着床能を持つ「分泌期」を迎えます。ざっくり言うと着床期です。

 

           着床期には7mmもあれば着床には十分なのですが、エコーで診る日程はその前(トリガーの日)なので

           それよりも薄いからみんなが心配する訳です。

           

           これは低温期の階段で起こっています。

           卵胞発育というメリットをとりたいが為に、子宮内膜を厚くするE2受容体が(1)と同じように場所を

           クロミッドに取られてしまうので、子宮内膜を低温期に増殖してゆくのを阻害されてしまうのが原因です。

           つまり(1)も(2)も原因は一つであり

 

           クロミッドがE2の負のフィードバックを阻害することで、卵胞発育のメリットを取りたいが為に

           オリモノの減少と子宮内膜が薄くなることを犠牲にいる訳です。どちらをとるか?という問題です。

           このように・・メリットとデメリット(副作用)は表裏一体です。

     

    

 

  副作用は・・じつは(3)があります。

 

  排卵時期時がずるずる・・と伸びてきてしまったなど経験はありませんか?

 

     これは年齢の若い方ならばあまり気にしなくていいのですが

 

     「体外受精」で高齢の方などはこのことを知っておいた方がいいです。

 

   結論から先にいうと・・・

 

             

 

             先程の潜水艦の話ですが、抗エストロゲン製剤は

 

             ネガティブ・フィードバックを阻害する薬ですが・・・

 

             ポジティブ・フィードバックすらも解除してしまうので、排卵時期が伸びてくる時は

 

             水面下の潜水艦が海面に浮上してきていることを示しています。 

 

             ただこの潜水艦は、海底探索の潜水艦ではなく・・「魚雷」を積んでいる怖さがあります。

 

 

 

 

★補足: その後の子宮内膜の薄さの連鎖 

           「高温期で内膜が薄いまま、毎回次の生理を迎えるとどうなるか?」

 

           これが大事になります。高温期つまりはしごの2階部分の話です。

           高温期(分泌期 だいたい着床期)では、子宮内膜がさらに厚くなることが出来ずに・・

           そのまま、生理を毎回迎えることになります。

            海辺の海岸の白浜と同じように、海岸が侵食されてゆくようになります。

           薄い子宮内膜の状態で、生理を迎えると、本来残るはずの子宮内膜まで剥げてゆくので

           長期間のクロミッド内服(5~6周期)は、子宮内膜を薄くする副作用があります。

            これも患者さんが自分で知っており、内膜の変化を自分の口でドクターに発して

           薬を違うものに変えてもらうなり、お休み周期を入れるなどの工夫をする必要があります。

 

    ★補足: クロミッドの半減期  

           「クロミッドがずっと効き続けて内膜が薄くなるのではない」

 

           副作用の話をしていると、クロミッドの薬を飲んでいるとずっと薬が効き続けるイメージがあるかも知れません

           が、薬には「半減期」というものがあり、薬が時間とともに効かなくなります。

           半減期は、薬がカラダから抜けて半分になる時期です。クロミッドの半減期は58時間なので

           仮に5日間飲んだとして、2週間位で血中から消えたカラダの外に排出されます。

 

           つまり、クロミッドがずっと効きつづけて内膜が薄くなるのはないです。

             

  

 

  


 

 

  今度は、絵で説明しましょう。

 

  クロミッドが本物のE2を阻害することで 卵を多く発育させることはわかったけれど・・

   

  同じ理由で、副作用も影のようについてきてしまうのはわかったけど・イメージで把握しましょう。

 

 

クロミッドは、E2の負のフィードバックを阻害する

 

  下のイラスト

  視床下部 ⇒  下垂体 ⇒ 卵巣 へとホルモンが降りてきて、最終的にはE2になります。

  E2は卵胞の中に分泌されて 卵胞の大きさを大きくしてくれます。(卵胞液中にE2が分泌する為)

 

   

  タイミングの時は、クロミッドとかの排卵誘発剤を使わずに、自然周期で卵胞の成長を主治医の先生とエコーでみていたと思います

  そして卵胞を複数そだてる薬が「排卵誘発剤」です。内服薬はその手軽さからも身近なものです。

  

  普通にしていたら複数育つ訳もないです。人間には卵子を1個しか排卵させない卵胞選別のハードルがあります。

  

  クロミフェンは、一言でいうと

    「抗エストゲン(E2、エストラジオール)作用を使って、たくさん卵胞を育てる薬」です。

 

  「抗エストゲン作用」というのは、 卵巣から視床下部(脳)の方向に対して

                   E2による負のフィードバックを阻害する作用ということです。

                   

 

  負のフィードバックというと耳なれない言葉だと思うのでわかりやすく説明します。

 

    視床下部の部分になるE2受容体に、普通はE2がポコってハマり・・キスペプチンに作用して、GnRHの分泌量が調整する

    のですが、本物のE2の代わりに、クロミッドが場所をとってしまう。

 

    本来の仕組み「負のフィードバック」をしようとしていた本物のE2からみると、仕事を奪われて

 

    「あ!阻害された」と思う訳です。

 

    だから、クロミッドは、「抗エストロゲン作用」を使って卵胞をたくさん育てる為に

    GnRHという蛇口をひらいて、FSHの蛇口を開いてたくさんの卵を育てるのが目的になります。

 

 

    

 

 

この絵のポイントは、二つあります。

      

    POINT1   クロミッドには二つの作用があるということ。

          長期の使用では排卵の抑制作用が自然に効いてくる。

 

    POINT2  抗エストロゲン製剤のクロミッドの作用点は、「視床下部」にあること。

 

          フェマーラは似ているのですが、作用点が、「下垂体」にあります。

 

    POINT3  (何周期も連続して)長期使用をしていると、排卵時期が伸びてくること。

 

          クロミッドにより十分ではないLHサージが起こりLUF(黄体化未破裂卵胞)が起こる可能性あること。

 

          それを回避する為に排卵をさせるトリガーを併用するけれど、排卵時期が伸びてくるということは

 

          卵子の成熟のスピードは卵胞のスピードのズレを生じてしまう方もいます。


抗エストロゲン作用って何??

 

E2受容体にE2が、ポコっとハマって・・DNAの転写が行われてタンパク質がつくらるので細胞が増殖し始めます。

 

受容体は英語でレセプターなので、ERとは、E2受容体のことです。

 

 

【説明】

 

★左図 本物のE2と、ERが合体しています。

     そして細胞増殖になってゆきます。

 

 

 

 

★左図 クロミッドが、ERと合体しています。

     クロミッドはたくさんあるので・・ERを探して

     合体してゆきます。

 

 

★左図  クロミッドが、本物のE2を押しのけて

     ERを独り占めしてゆくので、細胞の増殖!

     つまり、卵胞がたくさん作られてゆきます。

 

     押しのけられたE2は、本来自分がはまるERに

     たどりつくことが出来ません。

     これが・・

     クロミフェンが、E2を阻害するという作用であり

     専門用語で言う

    

     「クロミッドの抗エストロゲン作用」になります。



3つの質問のうちの・・ラストの質問の答え


 Q: クロミッドは、なんで排卵率は高いのに・・妊娠率は他の薬よりも低下するの?

 

 

    

    妊娠率というと概念が広いので何のところで妊娠率が落ちるのか?という話になります。

 

       副作用

    ________

    オリモノがすくなる

             ⇒精子がキツイ酸性の世界から少しお休みが出来るオリモノのアルカリ性寄りの世界がすくなるなる

             ⇒精子の数が少なるなる

             ⇒受精能(受精する能力をもったもの)を持つ精子の数が少なくなる

             ⇒受精率が悪くなる

             ⇒妊娠率が落ちる

 

    子宮内膜が薄くなる

             ⇒子宮内膜の増殖期が薄い(低温期の子宮内膜)

             ⇒連動して高温期の「分泌期」の子宮内膜が薄い

             ⇒P4の分泌が引き金になり、受精卵が子宮内膜に受け入れらえる環境の差がでる

             ⇒着床率が悪い

             ⇒妊娠率が落ちる

 

    その他

    ________

 

 

    長期間(5~6周期)クロミッドを連続使用しているとLUF(黄体化未破裂卵胞)が多くなる

 

             ⇒長期使用だとだんだんと排卵するまでに時間がかかってくる

             ⇒クロミッドは負のフィードバックも阻害する一方、長期使用の場合には

              正のフィードバックも阻害してくる。(E2↑⇒FSH↑を E2の正のフィードバック機構と呼びます)

 

             ⇒時間をかければE2は上がるけれど、それがうまくLHサージに転換できない

             ⇒しっかりとした卵成熟のステージに入れず、排卵をしないまま・・卵子を抱えたまま

              高温期を迎える

             ⇒未熟卵が多くなる(採卵しても成熟化しないなど)

             ⇒妊娠率が落ちる

 

    クロミフェン抵抗性

             体質的にクロミフェンによる、正のフィードバックも出来ない人

             生理5日目から少し多めの50mg3Tのクロミフェンを内服しても、それが卵胞発育にリンクしない

             という「クロミフェン抵抗性」を持つようになった

             つまり反応しないので卵胞が大きくならない。

 

             ⇒受精能をもつ成熟卵が取れない

             ⇒妊娠率が落ちる

 


排卵時期がずるずると伸びてくること

 

 

    「どうしたら排卵が伸びると思いますか?」 

 

    あれほど排卵時期が一定だったのに?

 

    あれほど採卵時期もそれほどズレなかったのに・・?  (どちらの卵巣から育ってくるか?そう話ではなくて・・)

 

 

 

    ここは別のページで詳細を語ります。

 

    先程も書きましたが、若い方ならばまだいいのですが、年齢の高い方は、知っておいた方がいいでしょう。

 

    

 

 

   なにかが多く出すぎて・・

 

 

    また何かが逆に足りない・・

 

 

    卵胞が大きくなるスピードと・・中で卵子が成熟するスピードは、同調していますか?