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PGT-Aは、置かれた立場によって意見が異なる

《参考》少し前まで「着床前診断」はPGSと呼ばれていましたが

    現在は、外国を見習って・・PGTという表記になっています。

   

    そしてPGTは、特定タイプの胚試験と区別される為に3つに別れています。

 

     1)PGT-A:  Aはaneuploidyの「A」です。異数性です。

             つまり、染色体の異数性(ふつうは2本だけで1本多いトリソミー、まは1本少ないモノソミー)

                        の検査

 

     2)PGT-SR: 染色体の構造異常の検査(染色体の転座とか逆位のこと)

 

     3)PGT-M: 遺伝子疾患の検査

 

       メインはこの3つですが、PGTーSというものもあり、これは性別(XX、XY)がわかる検査もあります。

 

       世界スタンダードのPGTーAですが、性別検査を禁止している国は多いです。

 

 


日本産婦人科学会倫理委員会の公開シンポジウムが12月16日の日曜日にありまして参加してきました。

 

そのテーマは、

「着床前診断ー PGT-A特別臨床研究の概要と今後の展望」

 

現在、日産婦ではPGT-Aの特別臨床研究パイロット試験をしていまして・・その中間発表もかねての

医療従事者やマスコミそして 様々な立場の患者さんも同席しました。

 

医師も、生殖医療医だけではなく、小児科医の先生もおられました。

また、社会学者の先生からのプレゼンもあり・・今後の日本でPGT-Aがどう扱われてゆくべきなのか?を考えるシンポジウムでした。

出て来る数値は、たぶん先生方も予想どおりの結果だったと思います。

 

パイロット試験では、加藤レディ-スも参加していたので、その中間発表もありました。

 

私が関心を持ったのは・・PGT-Aを実施して全部が染色体の数的異常だったKLCの患者さん達の次の行動でした。

結論からいうと それでも体外受精(採卵)を続行する人が半分もいたことです。

        そして半分の人は、治療を諦めるという選択をしたことです。

 

今回の日産婦の結果は、3ヶ月後に一般公開されるそうです。

 

   参加された患者さんは

        大谷先生の元でPGT-Aを受けた方

        卵子提供された方

        反復流産の方

        体外受精での反復不成功の方(高齢で着床しない人たち)

        

        そして、筋ジストロフィーの遺伝子疾患を患いながらも車椅子で参加された方

 

 

  医師たちも、専門の科を有しており、そして患者さん達もそれぞれの意見と状況回避があります。

 

  だから、このブログ記事のテーマは、私の感想であることから・・以下のようにしました。

 

  理由は、自分の置かれた立場で、考えてもらいたいからです。 それはケーススタディです。

 

 

 

  《シンポジウム内容》  以下は朝日新聞から

 

   日産婦はこの日東京都内で開いたシンポジウムで、研究の途中経過を報告。

 

   参加した77人のうち受精卵を子宮に戻せたのは約5割の38人。うち7割の27人が妊娠し、3人が流産した。

 

   いずれも妊娠中の段階で出産した人はいない。

 

   単純に比べられないが、流産の回数などが異なる人も含む同年代の体外受精をした女性よりは、流産率が低い傾向だという。

 

   今後さらに8人が受精卵を戻す予定。

 

   シンポジウムでは、臨床研究に参加した女性が「この検査は従来の技術より、流産を繰り返す夫婦には希望となる」と述べた。

 

   一方、生命倫理の専門家は「生命の選別ではないか」などと指摘。

 

   染色体に過不足のある受精卵でも出産できる可能性はあるが、この検査はそうした受精卵を子宮に戻さないことを理由に挙げた。

 

 


PGT-Aは、置かれた立場によって意見が異なる

 このシンポジウムの目的は、色々な立場の人たちの意見を拾い上げるという日産婦の意図があったと思います。

 

 社会学者の先生が、プレゼンの第一声で「私はキリスト教徒ではない」と言ったあとににプレゼンを進めていかれて

 内容は私個人的にはとてもいい者だったと思います。

 私が、クリスチャンだから・・日本ではバイアスをかけられて見られるのを肌身で感じます。

 

 卵子提供の患者さんも自分ではおっしゃっていましたが、日本では卵子提供の患者さんでは、

 先生に「ああ・・そう!」と言われてしまいそこから先への議論にはなりにくいんです。 

 

 クリスチャンも同じではないでしょうか?「ああ・・そう!」で終わってしまいます。

 色々な考えのクリスチャンがいるのですが残念です。

 

 

 生殖医療のクリニックで体外で頑張っている患者さんは大きくわけて2つです。

 (小児科医は、生まれてきた赤ちゃんや小さな子ども達が患者さんです)

 

    1)反復流産の方たち

 

    2)着床せずに反復不成功の人たち

 

   この2つでさえも、温度差があると思います。

 


体外受精で頑張る2タイプの患者さんがいる

 

   状況が違うと言った理由は、その人達が置かれた環境だと思います。

   

   日産婦のARTデータの最新版でも、44万7千件の体外が日本では行われています。その半分が40歳以上です。

   この数字は、数こそはアメリカの2倍ですが、アメリカの国土の広さを考慮すると実質は6倍にもなります。

   アメリカのように一定の年齢になったら、卵子提供や養子縁組といった選択肢を医師から言われる個人主義の国民性とは

   違うので・・長い冬に耐えて妊娠するか?枯れ果ててるまで続けるか?あきらめるか?という選択になります。

   日本でできないことは海外でというのは一部の方だけの選択肢です。それまで体外受精にお金と時間をつぎ込んできたからです。

 

     

 

    1)反復流産の人たち

 

       中間報告でもできてきたので・・PGT-Aは大きくプラスに働くと思います。

       でも実際は、PGT-Aは出産率そのものは変わらないという傾向がルーティンになっている他国同様に出てくると思います

       メリットは、妊娠して流産するまでの時間の無駄を省けることと、悲しい流産をも体験しなくてもいいことです。

 

       大切なのは、PGT-Aは妊娠率を上げる治療ではなく、流産率を上昇させない治療ということ。

             生まれてくる赤ちゃんの健康状態を100%保証はできないのもPGT-Aです。

             PGT-Aをしている方では、わかっていてもつい頭から失念したくなる事実ではあります。

 

       ただし、戻す卵の選別のことは後述します。

 

 

 

    2)着床せずに反復不成功の人たち

 

                       PGT-Aをすることによって、グレードの高い卵だからたぶん良いだろうという見た目の判断から開放されて

      どんなグレードが低くても、染色体の数的異常がない(=aneuploidy)2倍体の卵を戻せますので

      特に年齢の高い方は、採卵をして貯卵をする為に今以上に時間とお金をかける必要から開放されます。

 

      そして・・最悪の場合 採卵した卵の結果が全てaneuploidyだったならば、今後はどうするか?

      体外受精を続ける・続けないという客観的にものさしを得られます。

 

      先程、日本のARTをうける人の半分は40歳以上と申し上げましたが

      着床・妊娠は、卵子の質以外にも子宮環境でも3割が決まってくるので

      もちろん、それも考慮しなければなりません。

 

 

      若い方たちの卵子を使った卵子提供でも100%は妊娠できる訳ではないことからも理解しやすいと思います

 

 

      そして・・

 

                       障害を抱えて生まれた来たお子さんから「生きる勇気」ももらっているお母さんもいれば

 

       障害をもっているとはいえ、毎日幸せに暮らしているお子さんもいらっしゃいます。


診ている患者さんが異なるドクターも様々。

生殖医療医
生殖医療医
産婦人科医
産婦人科医
小児科医
小児科医
精神科医
精神科医

 

ドクターも、患者さんも、障害を持っているお子さんを育ているお母さんも、障害こそあれ幸せに暮らしている子どもたちも・・

 

これらの立場によって、現在パイロットスタディ続行中のPGT-Aの導入の賛成反対の立場があるのは自然なことです。 

 

 

 

ヒトの人生は、そんなに簡単ではないと思います。

 


最新のシーケンサーNGSを使えば、なんでも判明すると思いたい人は多いと思います。

ここに「倫理の問題」が出てきます。

 

ハードな言葉を使うと、胚の破棄の問題です。何をもって破棄の基準にするのか?

正常と異常が混在した「モザイク胚」の問題が出てきます。 モザイク経由でも赤ちゃんになる卵があるからです。

 

シーケンサーは、あまりにも正確になってしまったので、ちょっとしたエラーも見分けることも可能になりました。

ゲノムは量が少ないので、それを増幅する必要性があるのですがその増幅中にエラーがどれほど少ないかによってクリニックが

機械を選ぶ判断基準になります。  今ままの分析方法では、モザイクは異常と出ていたのが

モザイクがわかってしまうので困ることになります。 

全て異常だったものが、モザイク(赤ちゃんになる可能性が否定できないもの)と異常の2つとしてわかるようになりました。

 

2018年のTVが、4Kとか8Kとかの画質になり・・手品師マリックのネタをささえる透明の糸をしっかりとカメラで捉える

画質になりました。

 

魔術師ならば、編集でどうにでもなりますが、赤ちゃんの場合だとモザイクはとても悩むことになると誰でも容易に想像できます。

新型着床前診断のNIPTでも、このシーケンサーは使われますが、NIPTの検査において遺伝カウンセリングを受けずに

安易に個人判断する例がが多いので問題になっています。(+)陽性判定を受けた人の9割が中絶を望むからです。

遺伝カウンセリングを通して夫婦で考えるという時間を無駄な時間だと判断して、先に進む人が多いらしいです。

 

ましてや、着床前診断(PGT-A)では、時系列がさらに前倒しになるので、廃棄による罪悪感は希薄になると思います。

そしてアメリカでそうであるように、このスクリーニング検査が拡大してゆきます。

より安易に、他の遺伝子疾患でさえも出生前にわかってしまい・・それを破棄するか、それとも続行してお腹で育てていくのか?

夫婦の人生観に委ねることになります。

  

 

PGT-Aの検査におけるバイオプシーの瞬間
PGT-Aの検査におけるバイオプシーの瞬間

最新のシーケンサーNGSの盲点

◆日本人特有のDNA配列があるという事実


 

【日本人特有のDNA配列は、国際ゲノム基準の雛形とは少し違う】

 

この話をする前に・・日本人特有のDNAの配列があります。

「薬が効かなかったり」しても「体質だから・・・」と一括りにされてお茶を濁さざるを得なかった時代から、

個別医療への舵取りが今始まっています。

 

 

今をときめくNGS(短鎖技術による次世代シーケンサー)は、DNAの雛形に付きあせて調べていますが、

その雛形は、2003年のヒト・ゲノム解読完了での国際ゲノム基準です。  

 

そのDNAの雛形は、ヨーロッパ系とアフリカ系の人に由来しており、一般的な日本人に特有のDNAの変化が反映されていませんでした。

そのために本来あるべき違いが検出されなかったり、間検査があったりと問題視されていました。 これが解消されつつあります。

 

 

「日本人の体質」というものを科学的に考える時代になりつつあることを嬉しく思います。

タンパク質結合の特異性という難しく思えてしまいがちですが

栄養のとり方もヨーロッパ系やアフリカ系の人とは違うように、日本人特有のDNA配列も

国際的な基準に比べて24万6000箇所の塩基に違いがあるようです。

 

そのあたりが、プロテインS活性や第Ⅻ因子とも関係があるのかもしれません(推測ですが)

PGT-Aをされている方は、不育症検査をしっかりされている方が多いと思いますが、不育専門の主治医の先生に相談してみてください。

 

 

 


マイ・エピソード〈トリソミー21〉

 

私の古い友人で三人の子の子の父親います。真ん中の子がトリソミー21の女の子です。

 

彼の携帯の待受画面を10年前に見た時も、その中には小学低学年だったその女の子がいました。

 

そして・・あれから10年後 また彼の携帯の画面をみた時も、そこには成長したその女のがいました。

 

10年前に会った時も「この子が可愛いんだ。」と彼は嬉しそうにその携帯の待受画面を見せてくれました。

 

お腹の中にいる時にわかったその病気。 友人とその奥様は産むと決めた。

 

そして 次のように笑顔で話してくれた。

 

「生まれて来てくれて、すごく嬉しかったんだ。

 

縁があってうちの子になって生まれてきた。この子のおかげて父親としても、母親としても人間的に成長できた。

 

その子は2番目の子だったけど、三人目の子を授かった時はもうNIPTをしないと決めた。

 

三人目の子は健常者として生まれてきたのだけど、今でも我が家は2番目の子を中心に一家が団結しているんだ」

 

と話してくれた。

 

この話を聞いて、すごく羨ましかったです。

 

その彼が欲しかったのは、一つ屋根の下で団結している家族だったから・・それは30年前の学生時代からその話を聞いたからです。

 

彼は、その夢を実現した。その子が生まれてから彼の会社は飛躍的な大躍進をしました。

 

彼は私にぼそっと言ったことがあります。

 

「あとで考えると座敷わらしみたいだったかも知れないと。この子がいなくならないように(亡くならないように)この子の為に

 

 育てたい・・いつも家族全員に180%の笑顔をくれるんだ。」と。

 

 

 

 

私は・・恥ずかしいことに、家族を崩壊させてしまったから余計に家族イメージを子供が生まれる前から

 

夫婦でしっかりと話あっていることが大事なんだと思いました。 家族は簡単に崩れ去ることは、崩した人でしかわからないです。

 

 

体外受精をしている方は、妊娠した後にNIPTを受けるかどうか悩む人が、自然妊娠をする方よりも母数が多いと思います。

 

NIPTの時も、そして それよりずっと前のNGSの時も・・夫婦としてどうありたいか?考えてみてください。

 

それは、いくらインターネットで答えを探しても、主治医の先生に聞いても答えは見つからないですが

 

自分たち夫婦がどうなりたいのか? そういうことが・・大事なのでは?