卵質の良い卵を採卵したいと考えた時に・・
「ミトコンドリア」を考える方は多いです。 イラストのようにミトコンドリアはDNAを持っています。
採卵・受精した後に完成する胚(=受精卵)もその分裂の為のエネルギーは、ミトコンドリアから供給されます。
初期胚の期間と3日目から胚盤胞になる期間のエネルギーは違いますが、エネルギーを作ります。
☑ 分割が止まってしまった
☑ 受精出来ない
☑ 胚盤胞にならない
答えは、ミトコンドリアのマトリックス(黄緑部分)のクエン酸回路の中にあります。
ミトコンドリアが古代共生バクテリアの末裔として今でも核と対等に渡り合い、
予想を越えて、細胞の増殖にまで深く関わることが明らかにされています。
ミトコンドリアDNAは、核DNAはに細胞の増殖のサインを送り、また細胞死も司っています。
⇒ ミトコンドリアDNAは、核DNA(卵子経由のDNAや精子経由のDNA)をコントロールしている。
〈初期胚で必要な栄養エネルギー〉
ピルビン酸・乳酸・(アミノ酸)
〈3日目胚から胚盤胞になるまでに必要な栄養エネルギー〉
グルコース・アミノ酸
※イラストは、ミトコンドリアのエネルギー産生の話とからめてわかりやすくシンプルに必要栄養素を書いてます。
初期胚ではアミノ酸(=タンパク質)が全くいらない訳でないです。
グルコースが一番パワフルですが、人間の自然の卵管はその卵の成長に合わせて
卵管の中で逐次的(=シーケンシャル)に栄養をわけて卵に与えています。
着床の時も、子宮は阿吽の呼吸で、「胚盤胞がやってきたら・・エネルギーがいるだろう?」と
子宮内膜にグルコース濃度を高めてゆきます。 とても神秘的です。
イラストは、胚盤胞に育てるまで・・胚が必要な栄養素が違うから、2ステップ・メディウム(=シーケンシャル・メディウム)と
いう培養液を途中入れ替える方法です。
皆様が胚盤胞のグレード評価で3BBとかいう表記を考えたカードナー先生は、この2ステップメディウムを1999年に発明。
ミトコンドリアの話をするのにあたって、生理学が授業みたくなると眠くなってしまうので、自分とは関係ないと思いがちです。
【なぜ胚盤胞になれないのか? 坂が登れないのか?】
上記のイラストでは、赤い矢印の上り坂を描きましたが。卵質が弱い方や、年齢の高い方はこの赤い坂道が登れない。
初期胚盤胞になかなかなるのが難しい人が多いです。
「3BB」の真ん中のアルファベットは、ICMと言って「赤ちゃんになる細胞」です。
〃 ラストのアルファベットは、TEといって 「胎盤になる細胞」です。
【コンパクション(=分化)のタイミング】
培養液の中で成長分割してきた割球が、グチャ!と一つにまとまって、Day3の8細胞のようになっているのを
「分化」あるいは「コンパクション」と言います。
割球同士が全体会議をする為にまとまって、「君はICMになれ、僕はTEになるから」と会議をしています。
このコンパクションのタイミングがとても重要です。
早い段階(例えば4細胞の時)からグチャっと全体会議もしても、それぞれの割球が未熟なのに絵空事で終ってしまいます。
適正な時期のコンパクション・タイミングが大事になります。
【シーケンシャル・メディウムと シングル・メディウムの違い】
最近の主流は、上記のようなシーケンシャル・メディウムではなくて、ONE・STEP培養液(=シングル・メディウム)が人気が
ありますが、途中で培養液を大きく交換しない方法です。
最初から、胚盤胞になるまでの栄養素を全部つめこんでオール・イン・ワンにして
「卵が自分で自分にとって必要な栄養素は自然と取るでしょう」という考えに基づいて改良が重ねられています。
卵によっては、手をかけてやらないと育たない子と、自立した子がいるのも人間(=個体)と同じです。
それも卵の個性です。シーケンシャルが合っている子と、シングルが合っている子がいるのです。
【ブトウ糖とケトン体】
初期胚は、高エネルギーがいらずに低エネルギーで育つと思いがちですが
水面下で別のエネルギーがケトン体が動いています。
人間のエネルギーは、糖である「ブトウ糖」と「ケトン体」の2つのエネルギーがあります。
ケトン体という多いとすごく悪いイメージを持っている方が多いですが
ミトコンドリアの詳細説明で後述しますが・・ インスリン抵抗性がなければケトン体は多くても構わないのです。
皆様も絶食をするとケトン体の数値は跳ね上がりますが、カラダを維持する為にブドウ糖回路からケトン体回路へ
シフトしてることになります。水分さえとればある程度の絶食には耐えられるが人間のカラダです。
【ミトコンドリアDNAの不思議】
受精卵の分割のエネルギー源は、「ミトコンドリア」です。
卵質の良い(DNAの修復可能メカニズムを持つ)卵子は、ミトコンドリア量が多いですし、逆に
卵質の悪い(DNAの数的異常が起こった時に修復出来ない)卵子は、ミトコンドリア量が確かに少ないです。
どちらの卵子も排卵後に、そのミトコンドリア量をある目的の為に減らしてから受精ステージに進みます。
人間のミトコンドリアDNAは、母方のDNAしか遺伝しないということを聞いた人もいると思います。(ミトコンドリア・イブ)
精子由来のミトコンドリアは、受精後に分解して消滅し、卵子由来のミトコンドリアに依存するからです。
つまり培養ステージにおいては、卵子由来のミトコンドリアDNAと、卵子由来のDNAと、精子由来のDNAの3つしかいない。
受精時の「卵子由来の前核」と「精子由来の前核」の融合と消滅が生命のスタートです。
そして 消滅という「ゼロ」から 初めての第一歩「2分割」 ここである程度が決まってしまいます。
生命を支えるエネルギーにおいて、「卵子由来のミトコンドリア」が主導権を握るので
赤ちゃんの生命の存続は、母系をベースにしているという不思議さがあります。
【母のチカラ】
卵子の細胞だけでなく他の細胞も、細胞内の環境に合わせてミトコンドリアがダイナミックに形態を変化させます。
細胞分裂の前にミトコンドリアのDNA分裂が生じ、細胞死のボタンを押したり
逆に、細胞が障害を受けたりするとミトコンドリアの融合が起こり、回復をさせる。
すべて母のチカラです。
※DNAは、母のDNAと父のDNAと母のミトコンドリアDNAの3つがあります。
父のDNAがなければ胚の染色体が構成されないので、修復エネルギーの話をしています。傷を治すということ。
構造はこのようになっています。
細胞は、細胞膜・細胞質・核という三重構造になっています。卵子も同じです。
不妊治療では「染色体異常」とかいう言葉がよく出てきますが・・染色体は核の中に収まっています。
そのために、核DNAとかいう表現をします。これはミトコンドリアDNAと区別する為です。
ミトコンドリアは、生命が細胞分裂をしながら生きてゆくのに必要なエネルギーを作るので凄くいいイメージばかり
がありますが・・
細胞間でも使える共通貨幣と言えるべき・・エネルギーの供給と同時に、活性酸素も生み出します。
ストレートに言えば・・
細胞死(アポトーシス)を司るマスターであるミトコンドリアの一面もあります。
ミトコンドリアは、「細胞呼吸」をしています。それによって、細胞間の共通通過であるATPというエネルギーを作ります。
「解糖系」「クエン酸系」「電子伝達系」という3段階のはしごを登りながら、ある時は酸素を使いながらパワフルに
紙幣・貨幣をATPとして刷っていきます。 酸素を使うから・・どうしても活性酸素が生まれてきてしまうのです。
イラストをご覧ください。薄いミドリ色の道のようになっているのが「膜間腔」です。それを「外膜」と「内膜」で挟んでいます。
イオンや糖などの組成は卵子の細胞膜と同じですが
タンパク質の組成は、卵子の細胞と異なり、ミトコンドリアが「自爆スイッチ」を押して薄いミドリ色が破壊されると
タンパク質が細胞質(バックの白の部分)に漏れ出して細胞死(アポトーシス)が行われます。
【なぜ?自爆スイッチを押すのか?】
個体(全体としてカラダ)をよりよい状態に保つ為に積極的に引きおこされる古代からのメカニズムだからです。
図のグレーの部分が「マトリックス」と呼ばれて、赤いmDNA(ミトコンドリアDNA)がいます。
クエン酸回路(TCA回路)とも呼ばれます。
この中でアセチルCoA(=コエンザイム)がこのTCA回路で完全に酸化されると
ミトコンドリアの代謝機能に関する「酵素」がフルに働き、エネルギー(ATP)が作られる訳です。
【波及効果】
生きる為のエネルギーを作る以外には・・次のような働きもします。
1)ステロイドホルモン(E2やP4や男性ホルモンやコルチゾール等)の合成・代謝への影響
【特に採卵で採卵できなくて苦しんでいる方は・・】
ホルモン値をみながら、ミトコンドリアのマトリックスが舞台の「クエン酸回路」を考えることも大事です。
莢膜細胞で作られたT(=テストステロン)が顆粒膜細胞でE2に変換される酵素の話が、
この「クエン酸回路」です。
変換出来なかったら・・ブルーの顆粒膜細胞は更に厚くなり男性ホルモン優位になってゆくので
卵子は成熟から遠くなってゆくからです。 また卵胞の中にたまるP4からコルチゾールへの代謝促進も
卵質にとってはマイナスに働きます。
2)へムの合成(鉄)
3)カルシウムや鉄の細胞内濃度の調整
4)細胞周期や細胞死(アポトーシス)の調整
【活性酸素の産生源もあるミトコンドリア】
薄いミドリの部分が内膜ですが、ここにユビキノンや、シトクロムC還元酵素、シトクロムC酸化酵素が存在しており
それが「プロトン」を膜間腔にスイスイと汲み出すことによってエネルギーを作り出すことで出来ます。
効率性を優先する一方で、不十分な反応により「活性酸素」も生じさせてしまうデメリットもあります。
これが、酸化ストレスと言われているものです。 卵子の老化にも関与しています。
この原理がノーベル医学賞を1978年にとったピーター・ミッチェルの「化学浸透説」です。
聞き慣れない難しい用語ばかりで書いてしまっていますが・・
卵子に良い栄養素を考えるには、卵子にとってマイナスに働く「活性酸素」を知ってほしいからです。
当相談室は、特定のサプリなどを販売しない方針をとっていますが
サプリの世界は海千山千なので、効果があるものとないものを見極めることは大事なので
培養の話とミトコンドリアの話をしています。
クエン酸というと・・お掃除の時の「重曹」とか?グレープフルーツなどの柑橘系の酸っぱい!!イメージでしょうか?
なんで重曹でピカピカになるのか?というと酵素が働いているからです。
グレープフルーツも、薬物代謝酵素(解毒酵素)のシトクロムP450サブタイプ3A4 (CYP3A4) を阻害する作用があるので
E2製剤(エストラーナ・テープ)や移植の時(あるいは卵胞発育のサポート)のブレドニンと
バッティングして薬剤効果をおとしめる程のパワフルさを持ちます。
それがミトコンドリアの「クエン酸回路」です。 「TCAサイクル」と呼ばれるようにグルグルと回って何かを作っています。
★クエン酸回路のGREENのグルグルと回りまくり作るものは・・なに?
A: 解糖系で出来たピルビン酸が、アセチルCoAとオキサロ酢酸と反応して・・「クエン酸」となり
それ以降の反応がグルグルと回り、自分でもATPをつくりながら
高エネルギー物質をミトコンドリア内膜に送り、電子伝達系で・もっとATPを作り上げてゆきます。
★初期胚や3日目胚が胚盤胞になる為の材料は、このミトコンドリアに中に揃っている。
① アセチルCoA
② 酸素 (CO2)
③ 色々な酵素
この③の酵素は、タンパク質中心の食生活の必要性を意味しています。
これは卵子または胚の細胞の中にある「核」の話です。
この中に核DNAが入っており、DNAは二重らせんの形をしています。
DNAは・・タンパク質を作ります。 詳しくは、こちらをご覧下さい。
大切なことは、核DNAは、次の図の「ミトコンドリアDNA」とリンクをしていることです。
これは卵子または胚の細胞の中にある「核」の外である細胞質に無数に浮かぶミトコンドリアです。
ミトコンドリアDNAは、 核DNAと形が違って、まんまるの円になっています。
POINTは、ミトコンドリアに必要なタンパク質のうち、13種類がミトコンドリアDNAの情報を元に作られていること。
このタンパク質が、自爆ホタンを有するミトコンドリアと関連しています。
ミトコンドリアでは、私たちが摂取した栄養素が、酵素と呼ばれるたんぱく質の働きによって
順序よく分解されていきます。その過程でエネルギーが合成していく一方で
細胞死を司るマスター「ミトコンドリア」の側面を有しています。
核DNAの10倍変化しやすいと言われています。
例をあげると、核DNAが遠い祖先が何かに感染した際に取り込まれた時に・・それが遺伝を通して受け継がれていく時、
その中には発病から体を守る遺伝子を核DNAも8%持っている。
それを裏でサポートするのがミトコンドリアDNA。 このようにミトコンドリアDNAは変化して子孫を守る面も有する。
ミトコンドリアが古代共生バクテリアの末裔として今でも核と対等に渡り合い、
予想を越えて、細胞の増殖にまで深く関わることが明らかにされています。
1)ミトコンドリアDNAは、核DNAはに細胞の増殖のサインを送り、また細胞死も司っていまる。
⇒ ミトコンドリアDNAは、核DNA(卵子経由のDNAや精子経由のDNA)をコントロールしている。
2)光はミトコンドリアに吸収される
⇒ 吸収された光エネルギーによって、ATPが促進されたり、抑制されたりする。
ATPは、エネルギー分子としてではなく、シグナル分子としても働く。
つまり、光が細胞の活性化や不活化に関与している。
3)ミトコンドリアが作り出すATP。 ATP合成を進め過ぎると「活性酸素」も算出する
体外受精のデータ分析をして「ロス」を防ぎたい
その人その人に・・detailingを通してカスタマイズします。
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